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第5回「宇宙の謎に迫る! ミクロの不思議な世界 ~量子力学の奇妙な冒険~」開催レポート

サイエンスカフェ@ふくおか第5回を開催しました。

第5回ポスター

「サイエンスカフェ@ふくおか」もついに5回目。 今回の講師は九州大学の奥村健一博士でした。

今回の講師:奥村健一(九州大学)

奥村さんは九州大学素粒子理論研究室に所属する研究者です。総合研究大学院大学の数物科学研究科を修了後、東京大学宇宙線研究所・Lancaster大学・韓国科学技術院の研究員、そして東北大学助手を経ておよそ2年前に現在の九州大学に赴任されました。
現在、土台となっている理論:標準理論を越えた”新しい物理”を解明するべく研究を行っている方です。

今回の司会:吉岡瑞樹博士(九州大学)

今回の司会は九州大学素粒子実験研究室の吉岡さん。前回のサイエンスカフェでは講師の1人として素粒子についてトークして頂きました。今回も司会としてバリバリ働いてます!

さて、今回のサイエンスカフェのテーマは “量子力学” です。
「量子力学?なにそれ?」という声を受信したので簡単に言い換えましょう。ざっくり言っちゃうと、『めっちゃ小さい世界でどんな事が起きるか』を説明する分野のことです。

僕らが生活するような “大きな” 世界ではあり得ない事が、ものすご~く “小さい” 世界では起きちゃうんです。そして、その世界でどのような現象が起き得るのかを記述したのが量子力学なのです。
(この量子力学、1900年に製鉄所から生まれました。溶けた鉄について研究しているときに考えだされた「量子仮説」が量子力学の始まりです。)

量子仮説:
光が持てるエネルギーは連続的に値を取るのではなく、離散的(とびとび)な値しか取れないという仮説。プランクによって提唱されました。
このとびとびな値の最小単位が「量子」です。

では、ものすご~く小さい世界ってどのくらい小さいのでしょうか?
結論から言うと、量子力学で記述される不思議な現象は、およそ原子の大きさ(10-10m)くらい小さくなってくると見えてきます。
って、言われてもピンと来ないですよね。
もし原子の大きさを胡麻だとすると、僕ら人間の大きさは地球くらい大きくなってしまいます。それくらい小さい世界なのです。

そのくらい小さい世界では、物体に不思議な性質が現れてくるわけです。
例えば、物質が波の様に振る舞ったり、粒子の様に振る舞ったりする現象もそのうちの一つです。
光についてどのような現象があるか以下で挙げてみます。

<波でなければ説明できない現象>
・光が屈折すること
・光同士は衝突しないで通り過ぎること
・二重スリットの実験(後述)など
<粒子でなければ説明できない現象>
・遠くの星が見えること(波だったら弱過ぎて見えないはず)
・光電効果(光が金属に当たったとき、弾き出される電子のエネルギーは光の量が増えても変化しない事実)など

今から100年ほど前には「光が波なのか、粒子なのか」は大きな問題でしたが、現在では光は波の性質も粒子の性質も両方を併せ持つと考えられています。そして、「粒子の性質・波の性質の両方」を併せ持つのは光だけではありません。「全ての物質」が両方の性質を持つことが現在は知られています。
僕らの世界で粒子として見える物質でも波・粒子両方の性質を持っているのです。
(「粒子の性質・波の性質の両方を併せ持つ」ことを『二重性』と言います。)

「そんな訳無いだろう。」とか「キミが何を言っているのか分からないよ。」と仰る方も多いでしょう。しかし、観測事実からそのような結果が導き出されてしまうのです。

具体的な観測として、波の性質を示す実験に二重スリット実験というものがあります。
この実験は波が強め合ったり弱め合ったり(=干渉)することを用いた実験です。二重スリットの実験を行う事で物質の波の性質が見えてくるのです。そして、電子のような「粒子の二重スリット実験」を行っても波の性質が見えてしまうのです。
今回のサイエンスカフェでは実際に光の二重スリット実験を行いました!
実験は無事成功し、光の干渉による模様を見る事が出来ました。

(レーザーポインタさえあれば比較的簡単に行えるので興味のある方はやってみて下さい。ただし実験を行う際は、レーザー光が直接目に入ると失明の恐れがあるので、直接目に入らない様に気を付けて下さいね。

二重スリット実験については、分かり易く説明している動画があったので載せています。電子の二重スリット実験についても触れています。(外国のアニメーションですが、日本語字幕付きなのでご安心ください。)

外村彰(とのむらあきら)氏による電子の二重スリット実験の実験動画も載せています。明るい点は電子が当たった場所です。全体で30分間の実験だったのですが、最終的には強め合いと弱め合いが起きていることが分かります。
(外村彰氏はノーベル賞有力候補の一人でしたが、残念ながら今年の5月に亡くなっています。)

(このほかにも量子力学の不思議な話として不確定性原理、量子もつれ、トンネル効果などのお話がありましたが、これらの話はまた別の機会にでも…。)

今回のサイエンスカフェは全体を通して狐につままれたような雰囲気でした。やはり量子力学の世界はとても不思議で興味深いですね。
有名な物理学者でさえ「量子力学を完全に理解している人はいない」という言葉を残しています。それほど奥の深い分野なのです。
今回のサイエンスカフェで量子力学の世界を少しでも味わって頂けたなら幸いであります。

さて、次回のサイエンスカフェ@ふくおかは2013年になります。皆様のお陰で今年は実り多き年だったように思います。ぜひ来年もサイエンスカフェ@ふくおかをよろしくお願い致します。
それでは皆さん、良いお年を!

(中居)

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