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第10回「宇宙の謎に迫る!~素粒子をとらえる!~」開催レポート

みんなと物理をつなぐ素敵空間 サイエンスカフェ@ふくおか第10回を開催いたしました。

第10回ポスター

記念すべき第10回を迎えた今回のサイエンスカフェ@ふくおかのテーマは、「素粒子をとらえる」!

これまでのカフェでは、「なぜ素粒子を調べると宇宙がわかるのか?」などの”理論”のお話を中心にILCに迫って来ました。しかし、肝心の「どうやって素粒子をとらえるのか?」という”実験”のお話はほとんどなし。。素粒子”実験”研究室が協力しているのに。。

そこで、今回は素粒子をとらえる実験装置「検出器」についてお勉強&実験をしました!

今回もまたまた大勢の方にご参加頂きました!ありがとうございます!

第1部

まずは少しお勉強タイム!さまざまな検出器の原理とその歴史を学びます!
講師はお馴染み九州大学の吉岡瑞樹准教授、そして九州大学修士課程1年の古浦です。
古浦はここ最近の活動報告の筆者でもあります。自分で自分の姿を報告します。恥ずかしいです。

今回の講師:さわやかな笑顔を振りまく古浦(左)とピンぼけ気味の吉岡博士(右)

一応、講師としては初登場なので自己紹介を…

講師 古浦新司の紹介

東京理科大学で学士号を取得し、故郷福岡に復帰。現在、九州大学素粒子実験研究室にて修士課程1年生。物理と実験が大好きだけど、その面白さをみんなに伝えるほうがもっと好き。将来はでんじろう先生のような人を目指している。得意科目は国語で、苦手科目は理科と数学です。

なぜ吉岡先生と僕が白衣を着ているのかというと、ドラマ「ガリレオ」の福山雅治さんに憧れたからです。先日ドラマ内で、KEK(高エネルギー加速器研究機構)にて白衣を着ている福山さんが放映されましたが、少なくとも素粒子実験の研究者は本当は白衣を着ません。実に面白い。

では、お勉強の内容を振り返ってみましょう。

”ものを見る”ってそもそもどういうこと??

素粒子をいかにして見るかを学ぶ前に、そもそも「見る」という行為がどのように成り立っているか考えてみます。例えば、あなたの目の前にひとつのりんごがあるとします。

あなたはもちろんそれを”目で見て”、「そこに赤く丸いりんごがあるぞ」と思うはずです。そう、”目”だけがあれば「見る」ことは可能!…ではありません。そこにはもうひとつ大きな要素が必要です。それは、”光”です。

どこからかやってきた光が、りんごの表面で反射し、その反射してきた光を目がとらえることで私たちはりんごを見ているのです。「ある対象から反射してきた光を目で捉える」ことこそが「見る」という行為の本質です。では次に、りんごを素粒子に置き換えて「素粒子を見る」ことを考えてみます

驚くべきことに素粒子は小さすぎて光が当たりません。当たったとしても、その衝撃でヒュンッと飛んでいってしまいます。そう、そのあまりの小ささ故に素粒子は光を使って直接見ることはできないのです!なんてこった!

性質を活かして”間接的に”見る!

光の反射によって目で見ることができない以上、素粒子の観察は諦めなければならないのでしょうか?いや、物理学者たちはそんなことじゃめげません!彼らは、素粒子(放射線)の持つ以下のような性質に注目しました。

  • 電離作用
     素粒子はぶつかった原子から電子を取り去る(電離する)!
  • 蛍光作用
     素粒子は特定の物質中を通過すると光を発する!
  • 写真作用
     素粒子は光と同様に写真乳剤を黒化する!

これらの性質を活かせば”間接的に”素粒子を見ることができるはず!ということで物理学者はそれを可能にする装置「検出器」を生み出しました!

いろんな検出器

一口に「検出器」といっても非常にたくさんの種類があります。全部語っているとものすごく時間がかかってしまうので、ここでは今回実際に会場で実験を行った「霧箱」と「シンチレーションカウンター」について説明します!

・霧箱
おそらく一番最初に実用的に使用された検出器です。1900年頃に開発され、1950年代頃まで研究に使用されていました。素粒子の電離作用を利用し、素粒子の飛跡を雲として観測します。飛跡を?雲で?言っている意味がわからないと思うので、少し原理を説明します。
霧箱はその名の通り、箱です。その中には液体エタノールが底が浸る程度に入れられており、底面はドライアイスなどで冷やされます。こうすることによって箱内にエタノールの過飽和状態(今にも水滴になりそうなほど空気中にエタノールが浮遊している状態)が出来上がります。そこへ素粒子が通過すると、その道筋に沿って空気が電離されそこにエタノールが引き寄せられます。これにより素粒子の軌跡を雲として見ることができるのです。

シンチレーションカウンター
素粒子が通過することによってわずかに蛍光を発する物質をシンチレータと言います。このシンチレータと、そこから発せられるわずかな光を電気信号に変える光電子増倍管という装置が合体したものをシンチレーションカウンターと呼びます。光電子増倍管の中には特殊な形状の電極板が並んでおり、そこに何度もぶつかることで信号として読み出せるまで電子が増幅されます。

ここで紹介したもの以外にも、検出器にはさまざまな種類があります!しかし、どんな検出器も原理の元をたどれば、そのほとんどが素粒子の電離・蛍光作用を利用しています。

ILCの検出器

最後はついにILCの検出器!
ILCの検出器は2台あります。米国主導で開発中のSiD(Silicon Detector)、そして日欧主導で開発中のILD(International Large Detector)です。ともにさまざまな種類の検出器が組み合わさって作られた複合型検出器です。ILD・SiD、どちらも複雑かつ精緻な造りをしていて仕組みを理解するのは大変そうですが、細かく見ていけば今日学んだことの応用物であることがわかります!興味のある方はぜひ調べてみてください!

実際に見てみよう!

お勉強のあとは実験!まずシンチレーションカウンターで宇宙線や、市販のランタン用マントルに含まれるトリウムからのα線の信号を実際に見てもらいました!次に、霧箱で普段は見えない小さな粒子の飛跡を観察しました!下の写真は霧箱実験の様子。みなさんちゃんと見れたかな?

第2部

2部は恒例の物理談義タイムです!
今回もみなさん鋭い質問をたくさんぶつけてきてくださいました。いつか追い越されるのではないかと戦々恐々です。。

次回は

サイエンスカフェ、次回は6月21日(金)に開催予定!
テーマは、「宇宙に行く」!サイエンスカフェ@ふくおか、ついに宇宙に飛び出します。講師の九州大学平山博士とともにはるか頭上の宇宙に思いを馳せてみましょう。
その他詳しいことが決まり次第、HP・SNS等でお知らせします!

署名にご協力を!

九州背振地域へのILC誘致を目指して、民間の方々が強力な応援隊を組んでくださいました。
その名も、「九州へのILC誘致を実現する会」!
現在、ウェブサイトにてILC誘致に賛同していただける方の署名を集めています。ネットからも簡単に署名できるので、ぜひともご協力お願いします!福岡の盛り上がりを全国に伝えましょう!

(古浦)

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