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第19回「生物の謎に迫る!~永遠の好敵手、カエルとヘビの特殊能力に迫る!~」開催レポート

みんなと”カエル”をつなぐ第19回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

第19回ポスター

サイエンスカフェ@ふくおか、第19回目の今回のテーマは「生物の謎に迫る!〜永遠の好敵手、カエルとヘビの特殊能力に迫る!〜」です!「蛇に睨まれた蛙」?いやいや、カエルにだって対抗する術はある!!カエルに隠された意外な防御術に迫っていこう!

今回もBIZCOLIさんのフロアをお借りして…
たくさんの方に来ていただきました!ありがとうございます!

今回の講師は、九州大学 農学研究院の吉村友里博士!サイエンスカフェ@ふくおか初の女性研究者です。見た目はオシャレな女性…、しかしその正体はカエルとヘビのプロフェッショナル!!なんとカエルを舐めるだけでその種類を当てることができるそうです!いろいろインパクトありすぎです…。

講師の吉村先生

吉村友里博士のプロフィール
福岡県出身。「結婚できないのは蛙と蛇ばかり研究しているからだ」と最近親戚からの圧力がすごいアラサー女性研究者。九州大学大学院システム生命科学府にて学位取得後、農学研究院にて学術研究員として勤務。博士(理学)。最近の悩みは、婚期の遅れよりも、カエルのにおいを嗅ぎすぎてツチガエルアレルギーが発症したこと。

カエルのひみつ

カエルを知らない人はいませんよね?ぴょんぴょんと跳ねる愛らしい姿は昔から人々に親しまれ、現在でも様々なところにマスコットとして登場します。私たち日本人がカエルと聞いてイメージするのは、緑色の小さなアマガエルですよね。でもでも、私たちの知らないカエルが世界にはたくさんいます。カエルの種類は、日本国内だけでも44種類、世界では4300種以上もいるんだそうです!すげえ!!
それだけ数がいるとヘンな奴もたくさんいます。酸素が豊富な環境に生まれたために肺が退化してなくなったカエル、逆に酸素が乏しいので少しでも体表面積を増やそうと毛を生やしたカエル。世界最小の体長7.7mmのカエルや、なぜかオタマジャクシのときの方がサイズの大きいアベコベガエルなどなど。。さらにはお饅頭として食べれるカエルもいます。

会場で捕獲したカエルまんじゅう
(吉村先生が持ってきてくださいました。名古屋名物なんだそうです)

ヘビのひみつ

続いてヘビについて迫っていきましょう。生物学的分類でいうと、ヘビは爬虫類有鱗目に属します。有鱗…、たしかにヘビの体表はうろこで覆われていますね。でも、ヘビの体の中ってどうなっているんでしょうか?よくよく考えてみるとあの細長い体の中がどうなっているのかって不思議ですよね。実際に見てみましょう!こうなっています!

よくもまあこんな器用なつくりを…。ほそ〜い体の中にひと通りの臓器が収まっています。しかしよく見てみると他の生物と違う点があるのにお気づきでしょうか?そう、肺が片方だけ異常に小さいのです!進化の過程で左肺が退化し、右肺だけがそのまま残ったのだそうです。ヘビには、肺の以外にも他の生物とは違う独特の器官があります。それがヤコブソン器官とピット器官です。
ヤコブソン器官は、空気中のにおいを感知する器官で上顎にあります。舌を外に出してにおいを捉え、それを上顎のヤコブソン器官に運ぶことによってヘビはにおいを感知しています。ヘビがチロチロと舌を出すのにはそういった意味があったんですね!
ピット器官は、温度感知器で唇周辺にあります。生物が持つ体温を赤外線として捉え、なんと0.001~0.003℃の温度差も感知することができるそうです。赤外線温度計が付いてるなんてロボットみたいです!

カエルとヘビ カエルの特殊な防御術!

「蛇に睨まれた蛙」という言葉があるように、カエルにとってヘビは天敵です。無抵抗だとバックバク食べられてしまいます。そこでカエルはいろんな防御術を進化させていきました。周りの景色に溶け込む隠蔽色の体表を持ったり、背中に大きな目玉模様の柄を発達させて相手を驚かせたり、死んだふりをしたり、そして毒を持ったり。。
ヤドクガエルという種類のカエルを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?その仲間であるモウドクフキヤガエルはバトラコトキシンと呼ばれる強い毒素を分泌します。人間に対する致死量はわずか0.1~0.3ミリグラムと言われるこの猛毒を、コロンビアの原住民たちはモウドクフキヤガエルから抽出し、吹き矢の先に塗って狩猟に利用したそうです。だから、猛毒吹き矢ガエル。まんまですね。
こういった致死的な分泌物を持つカエルの研究はかなりの数行われているそうです。やっぱり目立ちますからね。しかし、致死的ではないにしろ敵に不快感を与える分泌物を持つカエルもたくさんいます。こちらについてはほとんど研究が行われてきませんでした。そこに着目した吉村先生は、「致死的でない分泌物がどのくらい効果があり、どうやって効いていくのか」について研究を行いました!先生が注目したのはこいつ!

ツチガエルさんです。

そして相方に選ばれたのが、

シマヘビさんです(こいつは縞のない黒化型!)。

シマヘビは昆虫から哺乳類までいろんな動物を食べてしまうにもかかわらず、その胃内容物にツチガエルがほとんど含まれていないことがわかっています。室内実験においても孵化直後のシマヘビがほとんどツチガエルを飲み込むことがないことが分かりました。そしてツチガエルは特有のにおいを持っています。このことから、ツチガエルはシマヘビに対してその分泌物を使って防御を取っていることが予想されます。しかし、仮に飲み込んでもシマヘビは死なないため致死的ではないということも分かります。まさに吉村先生の研究にうってつけのペアなのです!このペアを使用して吉村先生は2つの実験を行いました。

実験1 ツチガエルの捕食回避実験

「シマヘビはツチガエル食べないって言うけど、そもそもカエル自体食べないんじゃないの?」ごもっともな疑問です。そこで、確かに”ツチガエルだから”食べてないということを確かめるために、ツチガエルとよく似たヌマガエルを使用し、それぞれがどれぐらいシマヘビに咬まれるか対照実験を行いました。その結果がこちら。

結果は見てのとおり、明らかにツチガエルの方が咬み付かれる割合が低い!明らかにシマヘビから避けられています!さらに咬まれたあとに飲み込まれる割合を調べると、ヌマガエルは咬まれると確実に飲み込まれてしまいますが、ツチガエルは咬み付かれさえされど1匹も飲み込まれることはありませんでした!捕食回避率100%!

実験2 分泌物の捕食回避効果の検証実験

実験1でツチガエルが確かにシマヘビに避けられていることが分かりました。でも、「本当に分泌物のおかげなの?」って疑問が出てきますよね。ということで、次はツチガエルとヌマガエルのそれぞれの分泌物をニホンアカガエルという別個体に塗布してその捕食回避効果を見てみました。これでツチガエルの分泌物を塗った個体がシマヘビに避けられれば、分泌物自体に効果があるということが確かめられます!

結果は期待通り、「ツチガエルの分泌物を塗ったカエル」のほうが「ヌマガエルの分泌物を塗ったカエル」よりヘビからの捕食を回避することができるというものでした!

以上の結果から、ツチガエルはその(致死的ではない)分泌物を使って、シマヘビからの捕食をほぼ確実に回避するということが判明したのです!しかもその分泌物のにおいを使って、ヘビに警告をしたり仲間に危険を伝えたりしている可能性があります!ツチガエル、深いッ…!

カエルを語らう!

今までなんとも思っていなかったカエルにこんな秘密が隠されていたなんて驚きですね!講演のあとはいつもどおり先生と参加者とのフリートークタイム!今回も大いに盛り上がりました!

次回のカフェは?

次回のカフェ、テーマは、

「人体の謎に迫る!!〜人体の奇跡、体内時計の仕組みを解き明かす!〜」

私たちの体の中で無意識に繰り返されるリズム、体内時計の秘密に迫ります!
6月7日(土)10:00からの開催予定!
詳細はこちらをご覧ください!

(古浦)

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