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第26回 スプーン一杯、10億トン!極限物質”原子核”とは〜巨大加速器で迫る量子力学の世界〜

みんなと”原子核”をつなぐ第26回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

第26回ポスター

サイエンスカフェ@ふくおか、第26回目のテーマは「スプーン一杯、10億トン!極限物質”原子核”とは〜巨大加速器で迫る量子力学の世界〜」です!原子核という言葉は知っていても、それが一体どんな物質で、どんな性質を持っているのかというのは知らない方が多いのでは・・・?今回は極限物質である原子核の不思議に迫ります!!

今回も会場はBIZCOLIさんでした!
今回もたくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます!

今回の講師は九州大学理学研究院の坂口聡志博士です!
坂口先生には説明の最初に簡単なクイズを出したり、途中で動画を挟んだりするなど、とても聞きやすくて分かりやすい説明をして頂きました。さらに、講師が積極的にお客さんの質問に答えることで、講師とお客さんとの距離が近づき、活発なやりとりがあるサイエンスカフェになりました!

聞き手の素粒子実験研究室 吉岡博士(左)と講師の坂口博士(右)

坂口聡志博士のプロフィール
子供の頃から実験が大好き。暴走する自転車の上で鍵をかけ、空中に放り出されながら慣性を味わってみたり、体重計を浴槽に沈めて浮力を体感したり。通知表には「落ち着きがない」と書かれながらなんとか育つ。学生時代は勉強そっちのけで、バックパックを背負ってインドや東南アジアに。大学院で原子核という人間味あふれる物質に魅せられ、日夜研究中。東京大学修了、理化学研究所を経て、2011年より九州大学理学研究院助教。博士(理学)。福岡の食べ物が美味しすぎて、少しふっくらしてきました。

さて、皆さん原子核とは何か知っていますか?リンゴを例に説明すると、リンゴをばらすと1つ1つの細胞からできていて、その細胞は分子からできていて、分子は原子からできています。その原子をさらに分けると、原子は原子核と電子でできていて、その原子核は陽子と中性子からできています。これは学校の授業でも習いますね!

この説明だととても小さそうなイメージなのですが・・・原子核の大きさと重さをもっとイメージしてもらう為に、ここで2つ問題です!

Q1.原子の大きさが野球場くらいだとすると、原子核はどのくらいの大きさになるのか?
1.ピッチャーマウンド、2.バスケットボール、3.ビー玉
Q2.原子核をティースプーン1杯分すくったときの重さと、水で満杯にしたドームの重さを比べると、どちらが重いのか?

さあ、わかりますか~?

まず、1番の答えは・・・3番のビー玉です!原子核って、とてつもなく小さい!そして2番の答えは・・・ティースプーン1杯分の原子核の方が重く、なんとその重さは、水で満杯にしたドーム600杯分になります!!とてつもなく重い!!!

さて、ここまでで原子核の大きさと重さがなんとなくイメージできたと思うのですが、原子核の性質をもう少し詳しく見ていきましょう!

原子核の性質その1
原子核を構成している陽子と中性子のことを核子と言いますが、原子核は核子同士がほぼ接しており、密度は一定になっています。イメージで言うとパチンコ玉をまとめたような感じで、押しつぶすのは難しいのです。つまり、原子核は固体のような性質を持っています。
原子核の性質その2
原子核はお祭りのときに売っている水風船のように、つつくと伸びたり縮んだりする動きをします。つまり、原子核は液体のような性質を持っています。
原子核の性質その3
原子核の中で核子(陽子と中性子)は自由に運動していて、しかも量子力学により核子同士が衝突することはなく、上手に動き回っているのです。つまり、原子核は気体のような性質を持っています。

ここまで原子核の3つの性質をお話ししましたが・・・皆さん、あれっ?と思うことはありませんでしたか?そう、先程の3つの話をまとめると、「原子核は固体でもあり液体でもあり気体でもある。」ということになります。えっ?!原子核は固体なの?液体?気体??・・・原子核って結局なんなんだー?!
実は、この疑問の答えは「全て正しい」なのです!!原子核は固体であり、液体であり、気体でもあるのです。この3つの性質をすべて持つ原子核って、不思議な物質ですよね。

次はその原子核をどのように調べるのかを説明します。原子核はとても小さくて、顕微鏡を使っても見ることができないし、手で触ることもできません。では、どうやって研究するのかというと、ある原子核に別の原子核をぶつけることで原子核を調べます。しかし、原子核はプラスの電荷を帯びているので、あてようと思っても反発してしまいます。では、どうするのかと言うと、原子核に大きなエネルギーを与えてぶつけることで反応させます。そこで使われるのが粒子加速器です。
粒子加速器とは、電気の力で粒子にエネルギーを与えて加速させる装置のことです。現在は理化学研究所のRIビームファクトリーや、大阪大学の核物理研究センター、九州大学のタンデム加速器、そして世界中の様々な加速器を用いることで原子核の研究が行われています。これらの加速器を使えば、私たちの体や世界を形作っている原子核という不思議な物質の性質や、自然界に存在しない不安定な原子核の見せる新たな素顔、原子の中のミクロの世界で働く力そのものの性質、さらに元素が天体の中でどうやって生成されてきたのか、まだ見つかっていない新しい元素が存在するかどうか・・・まで、たくさんのことが分かるそうです!
粒子加速器は一般公開されている所もあるので、興味がある方は是非実物をご覧になってください。実際に見ると、その大きさに驚くかもしれません・・・!



今回の講演では、”極限物質”である原子核をイメージするところから最新の研究まで、幅広い内容のお話をしてくださいました。説明を聞けば聞くほど、わかったような謎が深まったような・・・原子核って不思議だけど魅力的な物質だということがよく分かりました。これからも研究が進んでいくことにより、まだまだたくさんある原子核の謎が解明されることを期待したいです!

~原子核の面白さを語らう~

後半の質問タイムでは、前半に続き活発に質問が挙がっていました。そして、原子核の話だけでなく、物理学全般に対する質問も挙がり、そこから基礎科学についての話題へと話がうつっていき、なんと講師のおまけ講演が始まりました!

ここで言う基礎科学とは、物理学のような自然科学の基礎的な研究をする分野のことを指します。基礎科学の研究目的は何かを「分かる」ことであり、とてもロマンがある世界です。しかし、世の中には基礎科学の研究はロマンだけで役に立たないのではないか、と考えている方もいます。実は、この疑問に対する明確な答えは無く、人それぞれが答えや考えを持っていると思います。
この疑問に対する答えとして、講師は「役に立たないことを本気でやる人がいる、と言うことが、ひいては人の役に立つのでは?」とおっしゃっていました。解説すると、例えば電気は現在の生活で無くてはならないものだと思いますが、その電気は何気ない興味から発見され、その後研究され続けた結果、今では人々の役に立つものになりました。また、計算機技術や、World Wide Webのように、基礎科学を研究するために生み出された技術が、思いがけなく世の中の役に立っているということもあります。つまり、役に立つという目標が最初からあったわけではないけれど、面白さに惹かれて本気でやっていたことが、未来で役に立つことがある、ということでした。

このお話を受けて、お客さんからどんな意見が出てくるのかな・・・と少し不安になっていましたが、なんと予想とは逆の反応が返ってきました。
あるお客さんからは、「基礎研究は役に立つと堂々と言えばいい。一生懸命しているんだと。それが100年後に役に立てばそれでいいじゃないか」という言葉を頂きました。基礎科学を研究している者にとっては、ある意味予想外の答えで感激し、とても勇気づけられる言葉だと思いました。

(余談ですが・・・筆者である私もこの疑問を考えたことがあります。天文学の先生に「基礎科学は何の役に立つのかわかりません。」という(今思うと非常に失礼な)質問をしたことがあります。先生には「残念ながら直接は役に立たちません。でも、基礎研究が進んでいくことで、宇宙がどうなっているのか、世の中の物質は何からできているのかという謎に対する答えを知ることができる。基礎科学の研究は、人々の叡智を高めることができ、感動を与えることができるという意味では、役に立っていると言えるのかもしれないね。」と答えて頂きました。
あくまで、これも基礎科学の価値に対する1つの意見です。基礎科学は科学的価値があるから研究が行われているのですが、その成果が科学者はもちろん、世の中の人々に感動を与えるという役目もある、ということを知りました。
基礎研究よりも、世の中の役に立つという明確な目的をもって研究されている応用科学の方が重要なのではないか、という考えもあると思いますが、その応用研究は基礎研究なくしてはできません。そういった意味でも、基礎科学の研究は重要であり、100年先の未来に役立つ研究なのではないかと私は思います。)

後半の最後では、「基礎科学の価値」という、とても大きなテーマが話題になっていましたが、科学に対する考えを深めることができたのではないかと思います。

今回は活動報告が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。
次回のサイエンスカフェはこちらからご確認ください!!

(大倉)

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