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第27回「コンピュータにとって計算とはなにか?〜パソコン、スマホはなぜ動く〜」開催レポート

みんなと”情報科学”をつなぐ第27回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!
活動報告が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。

第27回ポスター

サイエンスカフェ@ふくおか、第27回目のテーマは「コンピュータにとって計算とはなにか?〜パソコン、スマホはなぜ動く〜」です。今回は計算とはなにか?に迫ります!!

今回も会場はBIZCOLIさんでした!
今回もたくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます!

今回の講師は九州大学大学院システム情報科学研究院の竹田正幸博士です!
竹田先生には、情報科学についてとてもわかりやすく教えていただきました。説明の中には、わかりやすく工夫された図を使っていたり、ある問題を男女の恋を例にしていたりと、楽しく面白く聞くことができました!

聞き手の素粒子実験研究室 吉岡博士(左)と講師の竹田博士(右)

竹田正幸博士のプロフィール
小学校時代は、学研の「科学」を毎月心待ちにし、「数字のない数学」「発明発見物語全集」「ジャガイモの花と実」など数学や科学の読み物に魅せられ数学者や科学者を夢見る。中学では一転漫画家に憧れGペンを握ってお絵描きに没頭するが、高校でもっと凄い画力を持つ友人たちに囲まれすっかり自信を失くす。それならばと漫画原作者や小説家を志すも、これまた圧倒的な才能の持ち主に出会って打ちのめされる。大学は理学部数学科へ進んだがあまり興味をもてぬまま4年間を過ごす。だが、大学院で情報科学の面白さに心動かされ、つい研究者の道を選んで今日に至る。10年前より情報科学を子供たちに分かりやすく伝える「デジたま講座」の活動を続けている。

まず、今日のテーマである「情報科学」という学問は、20世紀に始まったばかりの新しい学問です。この学問は大きく3つの柱からできています。

  • 情報理論:いかに効率的に情報を表現するか
  • 計算理論:いかに効率的に情報を処理するか
  • 知能理論:いかに機械を知的にふるまわせるか

これらについて理論と実用の両面から研究されています。今日はこの「情報科学」についてのお話です!

「情報」という言葉を聞くと、コンピュータが思いつく方も多いと思います。コンピュータは今や生活の中で無くてはならないものですが、皆さんはその中身がどうなっているかは知っていますか?皆さんがコンピュータを使って何かを調べたり、文章を書いたりしているとき、コンピュータが何をしているかと言うと・・・実は計算をしているのです!ここでの「計算」とは電卓での計算ではなく、コンピュータのすべての処理のことを言います。そして、コンピュータにこちらの思う通りの計算をしてもらうためには、その計算手順をコンピュータに教えないといけないですよね?その計算手順のことを「アルゴリズム」と言います。イメージで言うと、料理のレシピみたいなものです。
そのアルゴリズムについて例を使って説明します!

ここで皆さんに問題です!
Qここに8枚の金貨があります。外見からは分からないが、うち1枚は偽物で、本物より軽いです。天秤を使って偽物を見つけるアルゴリズムを作りなさい。

まず、単純なアルゴリズムを考えると・・・
1. 金貨を4つのペアにし、各ペアの重さを比較する。 
2. 傾いたペアの軽い方が偽物。 
となります。この方法だと、天秤を最大4回使うことになります。金貨の数をn枚として、これを関係式にすると
天秤の使用回数=n/2
となります。

次に、もう少し早く偽物を見つけられる方法を考えてみます。下の図で説明します!

この方法だと、天秤を最大2回使えば偽物を見つけることができます!さっきの方法より早く見つけることができます。ですが、この程度の枚数だと、どちらの方法でもあまり変わらないのでは・・・?と思っちゃいますね。

更に、金貨の数がn枚のときを考えます。図にすると下のようになります。

例えば、この方法を使って金貨の数が9枚と10枚の場合の見分け方を示します。数が増えるので、それぞれのパターンを木の枝に例えた”決定木”を使ってわかりやすく図にすると、下のようになります。

ここで、金貨の枚数と天秤の使用回数の関係を考えます。上の図にも書いていありますが、金貨の枚数をn枚とすると、
天秤の使用回数=log3n
という関係になります。この関係式と、1番最初の方法での関係式
天秤の使用回数=n/2
を、グラフにして比較してみると・・・

という感じになります!最初の金貨8枚のときは、「どの方法でも天秤の使用回数はそんなに変わらないじゃん!」と思っていましたが、金貨の枚数が増えると、判別方法によって使用回数にこんなにも差が出るんですね!驚き!!

ということで、いかに効率のいい判別方法=効率のいいアルゴリズムを作ることが大切ということがわかります。

この他にも、様々な例を使って、アルゴリズムの高速化には限界があること、そして何でも計算できそうなコンピュータでも実は解けない問題がある、といったお話をわかりやすく説明していただきました!

現在はスーパーコンピューターなど、大量の計算を高速で処理できる装置が開発されています。しかし、これらの装置に頼りきりになるのではなく、使う人間が工夫することで、効率よく計算でき、事実上の不可能を可能にできるのである、と最後に先生はおっしゃっていました。
コンピュータは素晴らしい能力を持っていますが、結局それを使うのは人間です。機械に全てを任せるのではなく、その前に少しでも考えてみることが大切ですし、このことはコンピュータだけでなくあらゆる物を使うときにも言えることなのではないかと思いました。

~情報科学の面白さを語らう~

後半の質問タイムでは、コンピュータについての質問や、情報科学の応用的な質問などがたくさん挙がっていました!例えば、現在情報科学は社会インフラに多く応用されています。もちろん、システムは抜かりなく作ってあるのですが、人間が作っている物なので、完璧ではありません。システムが想定していないということもあるので、何でもできると信用しすぎないことも重要であるというお話がありました。

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