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第38回「磁石の謎に迫る!〜ナノテクで切り拓く磁石の世界〜」開催レポート

みんなと”磁石”をつなぐ第38回サイエンスカフェ@ふくおかを開催いたしました!

第38回ポスター

第38回のテーマは「磁石の謎に迫る!〜ナノテクで切り拓く磁石の世界〜」!
磁石の世界にナノスケールで迫りました!

会場は、BIZCOLIさんの素敵なスペースをお借りしました!

小さなお子様から大人までたくさんの方に来ていただきました。
ありがとうございます!!

今回の講師は九州大学理学研究院物理学部門の大西 紘平 助教!
先日ご結婚されたばかりだそうです!おめでとうございます!

講師の大西助教(左)と司会の吉岡准教授(右)

大西 紘平博士のプロフィール
北九州市に生まれ、3歳で関東地方に移ったきり、約30年ぶりに九州の地に戻ってきて、3年目です。幼少期から理系の家族に囲まれて育ったために何も疑うことなく理系へ。「自分でつくって自分で試す」を求めているうちに、気づけば肉眼では見えないくらい小さいものをつくるようになってました。いまは福岡での衣食住すべてを満喫しつつ、日々、一喜 一憂しています。

〜磁石って、何?〜

磁石は2つの極(S極とN極)を持つ物体で、まわりに磁場を発生します。

このような磁場に反応する物体の総称を磁性体といい、
とくに自ら磁場を発生するものを強磁性体と呼びます。

さて、磁石は同じ極同士では引き合い、異なる極同士では反発し合いますね。
一体どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

〜どうしてくっつくの?〜

磁性体にある操作を加えると磁石のような性質をもつことがあり、この現象を磁化といいます。
また、磁化の程度を表す量のことも同様に磁化と呼んでいます。

この”磁化”の正体は一体何なのでしょうか?

磁化を生じさせる方法としては、次の2つが挙げられます。
(1)磁性体自身を回転させる
(2)磁性体の周りに電流を流す

つまり、磁化とは”電子の流れ”のこと…??

正解は、電子自身の回転です。
私たちは、この回転の向きのことをスピンと呼んでいます。

つまり、電子ひとつひとつが小さな磁石なのです!

磁性体のもつ磁化は、磁性体中のスピンの向きをベクトル算したものです。
磁化の向きが同じ時に磁性体は引き合い、反対の時に反発し合います。

磁石の中のスピンの様子(※点線は磁場の方向)

そのため、磁石を割ると下の図のようになります。

〜小さくすると、何が起こる?〜

先ほど、電子ひとつひとつもスピンを持った小さな磁石だというお話をしました。
それでは、ナノスケールの”小さい磁石”を作った場合、どのように活用することができるのでしょうか?

下の図のような、薄い非磁性体(〜1μm)を2つの小さな磁石で挟み、電源をつないだものを考えてみましょう。

このとき、電流の大きさによって磁石の間で次のような現象が起こります。

・磁気抵抗効果
電流を流すと、電子は非磁性体を通ってもうひとつの磁性体へと向かいます。
このとき、磁石の向きが同じときは電流が流れやすく、磁石の向きが反対のときは電流が流れにくくなることが知られています。
このように磁石の向きが平行・反平行のときで抵抗の大きさが変わる現象を磁気抵抗効果といいます。
これは、電子が同じ向きのスピンを多く持った磁性体に伝わりやすい一方、反対向きのスピンを多く持った磁性体には反発するという性質によるものです。

・スピントランスファートルク
磁石の向きが反平行の状況で非常に大きな電流を流した場合、電流を流そうとして一方の磁石の向きが反転する現象が起こります。
この現象をスピントランスファートルクと呼びます。

これら二つの現象を合わせてスピントロニクスと呼び、メモリの書き換えや読み込みの技術などに利用されています。

“小さな磁石”は、身の回りにある多くの物に使われていたんですね!

現在、間に挟む非磁性体として「半導体」が多く用いられていますが、「導体」(超伝導体など)や「絶縁体」を利用したらどのような挙動を示すのかについても研究が行われているそうです。
今後のスピントロニクスの研究に、期待が高まります!

〜磁石を語らう〜

講演後の座談会も、磁石の話で盛り上がりました。

「磁気破損はなぜ起こる?」
「U字磁石はどうやって作られているのか?」
「S極(N極)だけの磁石は存在するの?」
など鋭い質問が飛び交っていました。

〜次回のサイエンスカフェ〜

「野生動物との共存に迫る!」
~狩猟を通して考える、人と野生動物の関係~

九州大学基幹教育院安田 章人 准教授をお迎えして、野生動物との共存に迫ります!

2016年7月8日(金)19:00から、
BIZCOLI 交流ラウンジにてお待ちしております!

お申し込みはこちらから!!

(森下)

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