九大の知と社会をつなぐー九州大学地域連携推進室

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国際シンポジウム「プラットフォーム」としての島ー持続可能な社会を目指すための学際的検討ー

 「島」は、海上に点在する陸地である。効率的な海上輸送、航空輸送等が可能となるまで、外交や交易の中継地として、また、拠点として発展してきた。一方で島は、海という壁に阻まれ、隔絶されてきた土地でもある。そのため、古い言葉や風習を残しつつ、それらを独自に発展させた歴史や文化を形成してきた。このように「島」は、外界への無限のルートを持つ開かれた存在でもあるとともに、独立した文化、文明をもつ閉じた存在でもある。

 このような背景によって発達してきた「島」社会であるが、ヒト・モノの輸送が海路だけではなくなると、人の交流によって発展した産業が衰退し、人口流出が起こるようになる。現在では日本中で問題となっている少子高齢化も早くから進み、それによって文化の継承、地域コミュニティの維持が難しくなっている地域も多い。現在、日本各地で見られる社会問題を、いわば「先取り」してきたともいえる。

 そのようななか、近年では、人口流出によって空いた土地を再活用する試みとして、先端的なイノベーションの実証実験、統合型リゾート(カジノ施設)への立候補、文化芸術に関係するクリエイティブな活動といった動きがみられるようになった。また、「隔絶された」強みを生かし、リモートワーク、コワーキングといった、いわゆる「働き方改革」に示唆を与えるような試みもとられている。

 つまり、「島」は、社会問題を先取りしている分、その打開策への取り組みも先進的におこなえているのである。これらの方策は、日本社会全体の問題にも還元できるものとして注目されている。

 「島」の活用は、日本の問題に対処するだけではない。国際問題に目を転じてみても、島を取り巻く水(波)、風、太陽光によるクリーンなエネルギーの開発拠点となったり、都市の過密化、温暖化による都市の水没などへの対策として海上都市が計画されたりと、世界的にも「島」資源が注目されている。閉じられた空間でもあり、開かれた空間でもある「島」は、日本を含む国際社会におけるさまざまな問題への解決のヒントを有しているのである。

 そこで、社会的、文化的にさまざまな研究可能性を秘めた存在である「島」について、地理的な環境とそこに息づく人々の営み、その背景にある歴史や文化、交易や産業の発展可能性、およびそれらを実現させるための制度整備といった複次的な観点から議論していきたい。

 「島」は、歴史的にも現代社会においても、外界から自律した独自の社会・市場・文化を形成していながら、社会・市場・文化を媒介する「プラットフォーム」としての役割も果たしている。本研究において、島という「プラットフォーム」に国内外の様々なディシプリンの研究者が集い、島に関する様々な事象を観察および分析することにより、自然や文化の多様性と自律性を備えた持続可能な社会を目指すための手がかりを得ることが可能になるだろう。

 このような学際的研究を通じて、九州地方における基幹大学としての九州大学の役割を果たすとともに、現代社会が抱える社会的課題の解決に向けて、国内外に開かれた拠点形成に向けた礎が築かれることが期待される。

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