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第84回「骨の形の謎に迫る!~数学がつなぐ異分野融合研究~」開催レポート

3月25日に開催された第84回サイエンスカフェ@ふくおかの開催報告です。

第84回サイエンスカフェ@ふくおかのテーマは
「骨の形の謎に迫る!」
~数学がつなぐ異分野融合研究~

皆さんは骨の形と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?普段目に見えず、骨格標本やレントゲンの時くらいしか目にしないため、あまりピンとこない人が多いのではないでしょうか。
そんな骨の形がどのように形作られるか、九州大学大学院医学研究院 生体制御学講座 系統解剖学分野の三浦岳教授にお話しいただきました。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今回もBIZCOLIさんのZoomを用いての開催となりました。

三浦先生(左上)、吉岡先生(右上)と参加者、スタッフの皆様

三浦先生プロフィール
宮城県生まれ。
医学部で生物の形づくりについて理論と実験を組み合わせて研究しています。
京都から福岡に移ってもうすぐ10年になります。
日本酒と焼酎文化圏の境目で両方楽しめる素晴らしい環境ですね。

発生とは

受精卵が細胞分裂し胚となり、胚が成長していき胎児となって出産されるまでの過程を発生と呼びます。三浦先生の研究室ではこの発生の過程で生物が形作られる仕組みをうまく定式化した数理モデルで作成し、生物の体の形づくりのメカニズムを解明することを目標としているそうです。

骨の形づくり

人の手は胚の成長過程で体幹から肢芽が形成され、やがて先端の骨が分化し、骨と骨の間の細胞がなくなっていき指が形成されます。
また頭蓋骨はいくつかの骨が組み合わさってできており、生まれてから25歳程度までは骨の間の細い継ぎ目の組織(縫合腺組織)が残っています。この縫合腺組織によって、頭蓋骨は脳を覆ったまま成長できます。この骨と骨のつなぎ目は子供のうちは直線ですが、成長するにつれ湾曲していき、複雑な形の縫合線が形成されます。

数理モデルで再現する

この手の骨や頭蓋骨の複雑なつなぎ目が形成される過程は、実は数理モデルを使って再現できるそうです。
この数式は反応拡散方程式が元になっていて、簡単に言うと仮想的な2種類の因子の拡散と相互作用を表しています。

植物との意外な接点

さらに三浦先生の研究室では分野を超えて植物の細胞表面に現れるパターンについてシミュレーションを行い、細胞壁が成長とともに複雑なジグソーパズルのような形を形成する過程を再現しました。この時の数理モデルは実は頭蓋骨の縫合線のモデルと同じものだったそうです。

このように実際の現象を数理モデル化して再現することにより、なぜこのような現象が起きるのか、条件が変わったときどのような変化が起きるか予想できるようになり、更に実験などを通して現象のにつながっていきます。

全く異なる分野が数理や物理の共通性を通じて接点が見つかるのは面白いですね。

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