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第98回「二酸化炭素の循環の謎に迫る!」~二酸化炭素は燃料になり得るのか~ 開催レポート

 年内最後のサイエンスカフェ@ふくおかは、久しぶりのオンライン開催でした。
今回は「二酸化炭素の循環の謎に迫る!~二酸化炭素は燃料になり得るのか~」をテーマに先生が行ってきた実験内容等のお話を伺いました。

福岡県生まれ。幼少期を福岡県や米国などで過ごし、中学・高校時代は長崎県にいました。大学からは関東で過ごし、大学の研究室ではアジアを中心に各国からの留学生と交流を深めました。
研究者を目指したきっかけは小学校6年生の頃、環境問題に関しての作文を書いたことです。そこから興味を持ち始め、研究者として環境問題に取り組み、貢献したいと思い、今に至ります。研究では、電気を使った物質変換により、有用な化合物をつくる研究に従事しています。2022年度より九州大学で研究を進める機会をいただき、伊都キャンパス周辺の豊かな自然に囲まれて研究する日々を送っています。

近年、二酸化炭素は地球温暖化の原因物質の一つとされ、マイナスのイメージがありますが、一方では豊富な炭素資源であるとも捉えられます。

豊富な炭素資源である二酸化炭素を、有用な化合物へと変換する手法の一つに電解還元法があります。
(※電解還元・・・陰極上でおこる電気分解反応)

室温常圧の条件下、印加する電位や電流により反応を制御できます。反応によってできるもの (生成物) は、電極材料や溶液・塩 (電解質) の種類によって違うことも報告されています。例えば、金属電極には、ギ酸(カルボン酸の一種で、無色で刺激臭のある液体) を生成しやすいものや一酸化炭素を生成しやすいもの、アルコールも生成できるものがあります。

研究では、微量のホウ素を含むメタルフリーの炭素材料であるダイヤモンド電極を用い、溶液に入れる塩の選択や溶液の特殊化により、反応の効率化や新たな生成物の生成を目指しました。

まずは、溶液に加える塩が、生成物の選択性や反応効率にどのように影響するのかを調べ、ギ酸が生成しやすい塩や一酸化炭素が生成しやすい塩の組み合わせを明らかにしました。

溶液の特殊化として、微細気泡化した二酸化炭素を含む溶液による反応を検討しました。微細気泡を含まない溶液を用いた場合と比べて、反応に要する電気エネルギーが減少することやより付加価値の高い化合物の生成へとつながる一酸化炭素の生成が増加することを見出しました。

以上のように、ダイヤモンド電極による二酸化炭素の電気分解による変換において、溶液の選定に関する基礎的な研究を行いました。これから他の化合物を生成する条件を探索する際の一助となることが期待されます。

・ファインバブルとは・・・・微細気泡で、私たちが日常、目にする泡よりずっと小さく、直径が100 µm (=0.1 mm) 未満の小さな泡のことをいいます。

ファインバブルは特異な性質を有するため、その特性を生かし、洗浄・浄化や有機合成などへの応用が進んできています。薬品や化学物質 (洗剤など) の使用量を減らし、地球環境浄化や地球資源消費削減への貢献が期待されます。

反面、電気化学反応においては、反応を効率よく進行させるための触媒の使用や、反応を仲介する化合物の添加、気体が反応物となる反応における気体の溶解度の低さなどが、環境配慮や反応の効率向上の観点から、改善すべき点として挙げられています。これらの解決策として、ファインバブルを、電気化学反応に対して有益に活用することを考えました。

ファインバブルを含む溶液の電気化学反応の特性を調査するとともに、気体が反応物となる化学反応における反応特性を吟味し、ファインバブルを電気化学反応で有効に利用することを目指して、日夜研究を続けています。


最後にまとめとして、ダイヤモンド電極による二酸化炭素の還元において、ギ酸 と一酸化炭素を選択的かつ高効率で生成することが可能であると述べられた後、今後の目標として、「電気の力でエネルギー資源を作りたい!」と力強くおっしゃっておりました!!先生の今後の研究に期待したいものです。


次回の予告
最後に第99回サイエンスカフェのご案内です。
「デザインって何?」~これがデザイン!、こうやってデザイン!、これもデザイン!~
講師の芸術工学研究院 尾方義人先生とデザインの謎に迫ります!是非ご参加ください。
なお、開催曜日がいつもと違うためご注意ください。
https://syarenkei.kyushu-u.ac.jp/2023/12/26/240125sciencecafe-info/

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