九大の知と社会をつなぐー九州大学地域連携推進室

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第102回サイエンスカフェ@ふくおか「本当のところ、日本の医療ってどうなってるの?」 ~世界からみた日本の医療~

2024年6月14日(金)に第102回目となるサイエンスカフェ@ふくおかをBIZCOLIさんの素敵な空間をお借りして開催しました。
たくさんの方々にご参加いただきました!

【講師紹介】

今回の講師は
九州大学病院・国際医療部
九州大学・病態機能内科学
准教授 森山 智彦先生です。

先生は佐賀県出身。
外国人が1人もいない田舎に育ち、海外で生活する機会にも恵まれませんでしたが、気がつけば外国人医師を相手にすることが生業となっている現在。
消化器内科医ですが、最近は国際的なお仕事でご活躍。
目標は世界中のビールを味わうこと!

今回は「本当のところ、日本の医療ってどうなってるの?~世界からみた日本の医療~」と題してお話いただきました。

【第一部】
各国の人々が自国の医療サービスに対してどう思っているのか?
というお話から、日本の社会保障制度、世界の医療制度について幅広くお話いただきました。

自国の医療に対する評価。日本人はというと特有の謙虚さも相まってか…満足度33%…世界と比べると低いというデータ結果。

日本は、病院数、病床数世界トップレベル!医療費は他国に比べてとても安いし、医療設備も充実しているのに…。
これには医療従事者もびっくりする程、評価が低いというのが実態です。

日本と他国の医療の違いについてお話いただきました。

みなさんもご存じの通り、日本の平均寿命は世界一!

何が日本を長寿国にしているのか…一番の要因は乳児死亡率がとても低いこと。
次に食事。和食が良いというだけではなく、和食と洋食をバランス良く摂れているところがGOOD。

さらに、日本は検診と健診が充実しています。検診と健診、この2つの違い、みなさんは分かりますか?
検診とは、例えばがん検診の様に特定の病気がないか調査する検査のことで、健診とは、健康診断のことを意味しています。

この2つが充実していて且つそれぞれのレベルが高い!日本ってすごい!!

続いて、日本の社会保障制度のお話の中で「フリーアクセス」というワードが出てきましたが…ご存じですか?
自分が行きたい病院を選んで診療を受けることができることを指します。
「当たり前じゃないの?」と思ってしまいますが、実はこれ、とてもすごい事なんです!!

世界の医療政策は大きく三つに分かれます。

日本の社会保障システムは、社会保険料が財源となる「社会保障制度」のもとに運営されており、
患者さんは医療費の一部を負担することで、自身の選んだ病院で十分な医療サービスを受けることができます。
ただし、腕の良い医者でもそうでない医者でも診察料は全て一緒であることや、
高齢化に伴って医療費が増加する傾向にあるといったマイナスな面もあるとのこと。 

「国営システム」が採用されているイギリスや北欧諸国では、全ての財源が税金でまかなわれており、
医療費は基本的には無料ですが、その分税金が高額であることが特徴です。
また、日本のように「フリーアクセス権」はなく、病院の受診や入院は数ヶ月待ちになることがあります。

この真逆を行っているのがアメリカの「民間医療保険システム」で、受診する病院や診療所によって価格の決め方が千差万別で、
ビジネス的な考えに基づいて医療を受ける仕組みとなっています。
要するにお金ですべて解決できるということですね。

日本の医療制度について、すごく勉強になるお話を聞くことができました。

世界トップレベルの先進的な医療を持っている日本が医療で国際貢献するにはどのようにすべきか?という内容でお話が進みます。

危険な地域にも飛び込み、外国で医療活動を行うこともひとつの手段ですが、「外国人医療従事者を育てる」という国際貢献もあります。

先生の経験として8年程前に南米で内視鏡検査の指導・お手伝いをされた時のお話がありました。
胃がんの罹患率が高い地域で、内視鏡医が足りていないことで、患者さん方は何ヶ月も検査を待たされてしまう状況にあったそうです。

海外では、道路が整備されていない地域があったり、その地域にたどり着くまでに山を越えていく必要があったり…。
大人数人がかりで医療機器を担いで山を越える…ということも珍しくありません。

日本で暮らしていると、日本の医療制度が当たり前だと感じますが、先生のお話にもあったような国や地域と比べてみると、
日本がどれだけ恵まれた環境なのかを感じました。

日本の強みは教育!そして今後、日本の医療をどんどん輸出していくことが必要。

日本では他の国々の様に苦労することなく教育を受けられます。
存分に教育を受けてスキルアップすることができる。そんな日本で教育を受けたいと考える外国人が増えおり、
九州大学病院でも年間50人以上の外国人医師を受け入れ、内視鏡検査のノウハウを学んでいます。
厚生労働省は医療技術国際展開推進事業を実施し、九州大学もその一つとして採択され、現在モンゴルと連携して取り組んでいます。

現地指導と遠隔教育を組み合わせた継続的な教育ができるようになった今、ハード面、ソフト面の両方で日本式の医療の輸出は今後さらに加速することが予想されており、ユニバーサルヘルスカバレッジ達成を目標とした国際医療貢献は今後ますます重要になっていくだろうというお話で、
第一部は盛況のうちに幕を閉じました。

第一部講演後の質疑応答では、医療に対する鋭い質問が飛び交い、先生から深いお話を聞くことができました。

【第二部】
第二部では、森山先生を囲んで、参加者の皆さんとより近い距離で意見交換や質疑応答を行いました。

時間が限られている中、幅広い内容をお話いただきました。
森山先生、貴重なお話をありがとうございました!


次回の「サイエンスカフェ@ふくおか」のお知らせ 
次回は、8月30日(金)19時よりBIZCOLIさんの交流ラウンジにて対面で開催されます。
詳細は後日こちらのHPにてご案内いたします。皆様のご参加をお待ちしております!

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